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ドラッカー「断絶の時代」から存続する組織と個人の在り方を考察する

時代を予期した伝説の書といわれる「断絶の時代」(ピーター・ドラッカー著、ダイヤモンド社刊)から、苦境の時代を超えて存続するための組織と個人の在り方について考察しました。本書では、現代は「知識社会」であり「組織社会」であり、また「グローバル化した社会」であることが強調されています。本書の重要なポイントを紹介し、順にその要点を説明していきます。

■ 現代は知識社会である

  • 知識は機能する時に初めて存在する一種のエネルギー
  • 知識は経済と社会の基盤であり行動の原理そのもの
  • 真の平等は知識社会においてのみ実現しうる

「知識」とは、情報を応用して価値創造の源泉としたものを意味します。例えば、データを分析して改善に役立てる方法なども知識に該当すると考えられます。現代の社会は、かつての肉体労働に変わって知識労働が主流となっており、この傾向は今後さらに加速していくとされています。高度な知識社会に適応すること、つまり学び続けることは組織や個人の存続にとって非常に重要です。誰もが教育を受け、機会を得られる社会こそが真に平等な社会であるとしています。

■ 現代は多元化した組織社会である

  • 組織社会は自由の代価としての責任を求める
  • 組織の目的は社会に対する貢献

現代は、企業はもとより、政府機関、大学、非営利組織など多元化した組織が相互に関連して存在しています。それぞれの組織は専門性を持ち、意思決定を行い成果を上げる自由を持つ代わりに、決定に伴う責任が課せられています。全ての個人が何らかの形で組織に所属しているため、すなわち全ての個人に責任が求められることになります。自分の担当する範囲の事において、責任感を持って行動することが自由であるための要件といえます。一方で、自分の担当範囲外のことについて責任を負うことは、越権行為であるとしています。

■ 利益は明日のためのコストである

  • 企業はイノベーションのための機関(一方で保護的維持機関である政府はイノベーションに不向き)
  • 企業の利益とは余剰ではなく不確実な明日のためのコスト
  • 企業の利益はコストの管理を95%程度にとどめた時に最大となる

企業と政府機関の違いはイノベーションを必要とするか否かという点で性質が大きく異なります。また、利益とは余剰ではなくコストであるという点は、企業の存続には利益が不可欠であることを意味します。政府機関はその性質上100%のコスト管理を求められるのに対し、企業は95%のコスト管理が適しています。これは、残りの5%のコスト管理に膨大な費用がかかるためです。極度の厳密さは企業にとってはマイナス影響を及ぼすことを示唆しています。

■ 教育は開発されていない唯一の職業である

  • 継続教育が真のゼネラリストを生み出す
  • 優先順位の決定は科学ではなく価値観による選択でなければならない
  • 倫理は自己規律によって律すべき

継続教育とは社会に出てから学校に戻って教育を受け、また社会に出るようなサイクルを繰り返すことを意味します。社会に出た経験を踏まえて学習した方がより効果が高い知識が多々あるためです。知識社会においては教育こそが重要な役割を担うため、継続教育を行う柔軟な教育体制が必要であるとしています。また、何を優先して行うかの決定は価値観つまり倫理観が求められるとしています。個人の倫理観と組織の倫理観は異なりますが、難しい判断を迫られた際に的確な選択を行うためにも、各々が倫理的な基準を持つことは重要です。未来を創造することは、知識を超えた(価値観に基づく)芸術の領域であるともしています。

■ 変化の時代にこそチャンスがある

  • グローバル経済は分裂した世界に調和をもたらす
  • われわれが直面する最も大きな断絶は知識の地位と力の変化
  • 「断絶の時代」こそ「好機の時代」である

グローバル化した社会では、国境を超えた投資と貿易は拡大するのが望ましいとしています。これまでの、金(物)が価値の中心であった社会から、知識が価値の中心となりうる変化の時代には、情報の収集、蓄積、応用を体系的に行い効率的に価値を創出する技術や能力が求められます。グローバルな視点で物事を考え、人類の存続(持続可能な未来)に貢献しようとする組織や個人にとっては機会に富んだチャンスの時代ということができます。

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本書は1960年代の著作ですが「断絶の時代」は1965年から2025年まで続くとしています。つまり「断絶の時代」は間もなく終わりを迎えることになりますが、ピーター・ドラッカー氏の予期した未来は、既に高い精度で現実となったということができます。本書は現代の社会情勢の成り立ちを理解する助けになり、知識社会おける情報の収集、蓄積、応用について考えを深めるきっかけとなります。断絶の時代を超えて存続するための示唆に富んだ本書のご一読をお勧めいたします。書籍の詳細は下記からご覧ください。

(当記事執筆者:辻中 玲

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