ビジネスの本質を理解する「聖書」の価値観について

聖書」は世界一発行されている書物ともされており、神と人間との関わり合いの歴史について描く文書で、ユダヤ教キリスト教の正典「旧約聖書」、正教会やカトリック教会の正典「旧約聖書続編」、キリスト教の正典新約聖書」が含まれています。

ちなみに「マネジメント」の著者であるピーター・F・ドラッカーの数々の著書や、「ビジョナリー・カンパニー」シリーズの著者であるジム・コリンズの著書にも聖書に基づいた記述が数多く登場します。聖書の価値観が世界的なビジネスシンカーの思考のバックボーンとなっていることから、聖書が現代のビジネスを考える際に最も重要な価値観の一面を示しているといえるのではないでしょうか。

また、聖書の世界はシェイクスピアやダヴィンチをはじめ多くの文学や芸術のモチーフとなっています。特にクリエイティブワークを業とする方にとっては、歴史的な作品の背景となっている価値観に触れることは非常に重要です。また、聖書を自己啓発に活用することで、長い歴史に裏付けられた知恵と教訓が、ビジネスにおける重要な意思決定をする際の支えとなってくれるかもしれません。

しかし、壮大な内容で構成される聖書は、その文章量も一般的な日本語版でも約2,500ページと多く、読了することに読書スピードの速い人でも1年以上かかるといわれています。誰もがすぐに聖書の価値観の恩恵に預かれるわけではなさそうですが、今回は聖書の内容をざっと要約して紹介しますので、興味を持った物語を調べるなどしてビジネスのヒントを探してみてはいかがでしょうか。

ここでは「聖書」の全体像と価値観に触れていただくために、それぞれの内容を要約、関連する画像、引用(「聖書 旧約聖書続編つき 新共同訳」日本聖書協会 刊)によって紹介します。文章中にWikipediaへのリンクを貼ってありますので合わせてご参照ください。

「旧約聖書」は下記で構成されています。

創世記:神の天地創造アダムイブノアの方舟などの記述を含む。アブラハム(信仰の父と呼ばれる。イシュマエルイサクという息子がおり、イサクを神に捧げようとしたその決意が神に信仰を示した)、イサク(エサウヤコブという双子の息子がおり、ヤコブは兄エサウを出し抜いて長子の祝福を得、ユダヤ人の祖として後に国名ともなる「イスラエル」の名を得た)などが登場する。
出エジプト記モーセ十戒を含む。モーセが、虐げられていたユダヤ人を率いてエジプトから脱出する物語。
レビ記:内容は律法の種々の細則が大部分を占めている。
民数記:イスラエルの民の人口調査に関する内容。
申命記:説話。死を前にしたモーセモアブの荒れ野で民に対して行った3つの説話をまとめた内容。ここまでがモーセ五書と呼ばれる。
ヨシュア記:モーセの後継者、ヨシュアの指導の下、イスラエル人カナンに住む諸民族を武力で制圧し、約束の地を征服していく歴史記述。
士師記ヨシュアの死後、サムエルの登場に至るまでのイスラエル人の歴史記述。他民族の侵略を受けたイスラエル人を「士師」と呼ばれる歴代の英雄達が救済する内容。
ルツ記:寡婦となった後も義母の側にいることを望んだモアブ人女性ルツの物語。ルツはその誠実さの結果ダビデの祖先に名を連ねることになった。ミレーの絵画「落穂拾い」のモチーフである。
サムエル記上,下:中央集権国家形成の歴史。ダビデゴリアテサウルダビデダビデバト・シェバ(ウリヤの妻、ソロモンの母) 他が登場するイスラエル史。
列王記上,下ソロモンへの王位継承、エルサレム神殿と宮殿の建築、エルサレム没落までの記述。
歴代誌上,下:「サムエル記」「列王記」をもとにしてイスラエルの歴史を再構成した内容。神殿についての記述や職制の人名リストが多い。
エズラ記:バビロン捕囚となった民の解放後の歴史記述。エルサレムに派遣された律法の書記官で、律法によってユダヤ民族をまとめなおそうとした人物エズラに由来。
ネヘミヤ記:ユダヤ人共同体の再建のための「ネヘミヤの事跡」「律法の公布」等。ネヘミヤは厳しく様々な問題に取り組み、宗教上の改革や社会の改革を行ったとされる。
エステル記ペルシャの王クセルクセスの后となったモルデカイの養女でユダヤ人女性エステルの知恵と活躍を描く。エステルの勇気ある行動により、ユダヤ人を皆殺しにすべく陰謀をめぐらせていた権力者ハマンが処刑された。これをきっかけにユダヤ人の解放を祝うユダヤ教の祭りプーリームが成立した。
ヨブ記:正しい人に悪い事が起きる「義人の苦難」を扱う書。サタンに無償の信仰及び無償の愛を否定され、苦難に襲われたヨブは「わたしたちは、神から幸福をいただいたのだから、不幸もいただこうではないか。」(ヨブ 2:10)と語った。
詩編:150篇のヤハウェ)への賛美。その多くがダビデの作であるとされている。
箴言:内容は教訓の集合で、様々な徳や不徳とその結果、日常における知恵や忠告等。その多くはソロモン王の作とされる。
コヘレトの言葉:普遍的な疑問への哲学的考察がなされた思想書で著者はソロモン王とされる。「神を畏れ、その戒めを守れ。」(コヘ 12:13 )と説く。
雅歌:男女の恋の歌であり、恋愛と男女の賛美を歌い上げる詩。ソロモン王の作とされる。
イザヤ書イザヤによる預言書。ユダ国民が偶像礼拝からバビロン捕囚となると予言。「希望と救いと慰め」の預言を含んだ内容。
エレミヤ書エレミヤによる予言書。神に従わないイスラエル人がバビロンによって滅ぼされる事を預言する内容。
哀歌紀元前586年におきたエルサレムの陥落とエルサレム神殿の破壊を嘆くエレミヤによる5つの哀歌。バビロン捕囚の時代に作られたものとされる。
エゼキエル書:預言者エゼキエルの著。神の怒りにより陥落したエルサレム、バビロンに捕囚されたイスラエル人に関する記述。悔い改めの希望も書かれている。
ダニエル書ネブカドネツァル2世に重用された賢者ダニエルの身に起こったことや幻視で構成される。
ホセア書:偶像崇拝をしたイスラエルに対する裁きとして、神がイスラエルを見放す事にされたという内容。
ヨエル書:ヨエルの著とされる。ユダの地を襲った大災害に神の裁きの予兆をみ、悔い改めを勧める内容。
アモス書:アモスの著とされるイスラエル王国に対する神の裁きの宣告とイスラエルの支配者たちへの悔い改めの要求。裁きについての5つの幻(イナゴ、燃える火、重り縄、夏の果物、祭壇の傍らの主)、結びにダビデの系統を引くイスラエル人の回復が語られる。
オバデヤ書:オバデヤの著とされる。「エドムの傲慢と滅亡」と「イスラエルの回復」の予言書。
ヨナ書:滅ぼされると予言されたアッシリアの首都ニネヴェの人々の悔い改めと断食により、神がニネヴェの破壊を中止したとする内容。嵐に遭遇した預言者ヨナが大きな魚に飲まれる話が含まれる。
ミカ書:預言者ミカの著とされる。支配階級に抑圧されている人たちの苦しみに共感し、不正を行う者に神の裁きと滅びが近づいていることを語る。
ナホム書:預言者ナホムの著とされる。内容はニネベの陥落とアッシリアへの裁き。
ハバクク書:預言者ハバククの著とされる。バビロンの脅威が残酷な描写をもって描かれている。内容は「民の悪行に対する神の怒り」「異民族による怒りの執行」「怒りのうちにも憐れみを忘れぬ神」。
ゼファニヤ書:預言者ゼファニアの著とされる。諸国とユダに対する神の裁き、その後の救いの喜びについて語られる。
ハガイ書エルサレム神殿の再建に関する預言者ハガイによる予言書。
ゼカリヤ書エルサレム神殿の再建に関する予言書。悔い改めを促す呼びかけ。
マラキ書:預言の主題は宗教儀式の厳守、及び雑婚の禁止。祭司の堕落、軽薄な雑婚・離婚、捧げ物の不履行などに対する言及。

「太陽、月、植物の創造」
ミケランジェロ・ブオナローティ画
(システィーナ礼拝堂天井画)

「洪水」
ミケランジェロ・ブオナローティ画
(システィーナ礼拝堂蔵)

「イサクを捧げるアブラハム」
ロラン・ド・ラ・イール
(オルレアン美術館)

「モーセ」
ミケランジェロ
(サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会)

破壊されるソドムとゴモラから脱出するロト妻子。掟を破り後ろを振り向いたロトの妻が塩の柱になり始めている。
(ニュルンベルク年代記)

「ソドムとゴモラの破壊」
ジョン・マーティン

「落穂拾い」
ジャン=フランソワ・ミレー
(オルセー美術館)

「ダビデの弾く竪琴に聞き入るサウル」
レンブラント・ファン・レイン

「ダビデ像」
ミケランジェロ
(アカデミア美術館)

「幼きサムエル」
ジョシュア・レイノルズ
(ファーブル美術館)

「知者ソロモンの裁き」
ギュスターヴ・ドレ

「王の前で気絶するエステル」
アルテミジア・ジェンティレスキ

「エルサレム滅亡を嘆く預言者エレミヤ」
レンブラント
(アムステルダム国立美術館蔵)

「エゼキエルの幻視」
ラファエロ・サンティ
(ピッティ宮殿)

「ライオンの穴の中のダニエル」
ルーベンス

バビロンの滅亡を描いた木版画
(ニュルンベルク年代記)

バアル像
(ルーヴル美術館)

「エルサレム神殿」
エゼキエルの予言にある再建案を元に19世紀に図案化された

「旧約聖書」から(引用)

  • 「自分の力と手の働きで、この富を築いた」などと考えてはならない。(申 8:17)
  • 主の御声に聞き従わないがゆえに、滅び去る。(申 8:19)
  • 裁きを曲げず、偏り見ず、賄賂を受け取ってはならない。賄賂は賢い者の目をくらませ、正しい者の言い分をゆがめるからである。(申 16:19)
  • 主を畏れ敬うこと、それが知恵 悪を遠ざけること、それが分別。(ヨブ 28:28)
  • 雄々しくあれ。心を強くせよ。主を待ち望め。(詩 27:14)
  • 悪を避け、善を行い 平和を尋ね求め、追い求めよ。(詩 34 5:15)
  • 戒めは灯、教えは光。懲らしめや諭しは命の道。(箴 6:23)
  • 不遜な者を叱るな、彼はあなたを憎むであろう。知恵ある人を叱れ、彼はあなたを愛するであろう。(箴 9:8)
  • 人間を豊かにするのは主の祝福である。人間が苦労しても何も加えることはできない。(箴 10:23)
  • 英知ある人は沈黙を守る。誠実な人は事を秘めておく。(箴 11:11-13)
  • 破滅に先立つのは心の驕り。名誉に先立つのは謙遜。(箴 17:12)
  • 愚か者を雇い、通りすがりの人を雇うのは 射手が何でもかまわず射抜くようなものだ。(箴 26:10)
  • 怠け者は自分を賢者だと思い込む(箴 26:16)
  • 通行人が自分に関係のない争いに興奮するのは犬の耳をつかむようなものだ。(箴 26:17)
  • 罪を隠しているものは栄えない。(箴 28:13)
  • 人は、裸で母の胎を出たように、裸で帰る。〜 神に与えられた短い人生の日々に、飲み食いし、太陽の下で労苦した結果のすべてに満足することこそ、幸福で良いことだ。(コヘ 5:14-17)
  • 気短に怒るな。怒りは愚者の胸に宿るもの。(コヘ 7:9)
  • 何によらず手をつけたことは熱心にするがよい。いつかは行かなければならないあの陰府には 仕事も企ても、知恵も知識も、もうないのだ。(コヘ 9:10)
  • 一度の過ちは多くの善をそこなう。僅かな愚行は知恵や名誉より高くつく。(コヘ 9:18-10:1)
  • 青春の日々にこそ、お前の創造主に心を留めよ。(コヘ 12:1)
  • 悔い改めるものは恵みの御業によって贖われる。(イザ 1:27)
  • どのような仕事もしてはならない。安息日を聖別しなさい。(エレ 17:22)
  • 正義と恵みの業を行い、搾取されている者を虐げる者の手から救え。(エレ 22:3)
  • 主の救いを黙して待てば、幸いを得る。若い時に軛を負った人は、幸いを得る。(哀 3:27)
  • 正しいひとの正しさはその人だけのものであり、悪人の悪もその人だけのものである。(エゼ 18:20)
  • 悪人が自分の行った悪から離れて正義と恵みの業を行うなら、彼は自分の命を救うことができる。(エゼ 18:27-28)
  • 善を求めよ、悪を求めるな お前たちが生きることができるために。(アモ 5:14)
  • お前がしたように、お前にもされる。お前の業は、お前の頭上に返る。(オバ 15)
  • 主の道は永遠に変わらない。(ハバ 3-6)
  • 高慢な者、悪を行うものは すべてわらのようになる。〜 しかし、わが名を畏れ敬うあなたたちには義の太陽が昇る。(マラ 3:19-20)

「旧約聖書続編」は下記で構成されています。

トビト記:失明したトビトとその息子トビアを天使ラファエルが助ける物語。トビアはサラについていた悪魔(アスモデウス)を追い出してサラと結婚し、トビトの目も癒された。
ユディト記アッシリアネブカドネツァルホロフェルネスを派遣してユダヤを責める。美しい寡婦ユディトがホロフェルネスを誘惑した上で首をはね持ち帰った。これによりアッシリアの軍勢は敗走した。
エステル記(ギリシャ語)ペルシャの王クセルクセスの后となったモルデカイの養女でユダヤ人女性エステルの知恵と活躍を描く。エステルの勇気ある行動により、ユダヤ人を皆殺しにすべく陰謀をめぐらせていた権力者ハマンが処刑された。ユダヤ人の解放を祝うユダヤ教の祭りプーリームが成立した。(ヘブライ語のエステル記に追加した内容)
マカバイ記1:マカバイ戦争など、ヘレニズム時代のユダヤの歴史を描く。
マカバイ記2エジプトのユダヤに対する迫害とそれに対抗する宗教的情熱、ユダ・マカバイの活躍が描かれている。登場人物はヨナタンシモン 他。ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルが作曲した「ユダス・マカベウス」の「見よ勇者は帰る」のモチーフである。
知恵の書:「ソロモンの知恵」とも呼ばれ、知恵の重要性、信仰が最上の知恵であることを説く。
シラ書(集会の書):著者の名から「ベン・シラの知恵」とも言われる、信仰に基づいた処世術、教訓、格言の集成。主を畏れることこそ最高の知恵であるとする内容。
バルク書:バルクの著とされる。知恵の賛美が見られ、知恵=律法と説く。
エレミヤの手紙偶像礼拝の愚かさ、無力さを一貫して指摘した、バビロンへ拉致されることになった民への手紙。
ダニエル書補遺: 賢者ダニエルにまつわる3種の教訓的短編。燃え盛る炉に投げ込まれた3人がアザルヤの祈りよって天使に守られ、神を賛美する内容「アザルヤの祈りと三人の若者の賛歌」。ダニエルが、無実の罪に問われた女性スザンナの潔白を証明する「スザンナ」。ダニエルが、王がベルという偶像に捧げる大量の食料を消費しているのは実は祭司らであることを突き止める「ベルと竜」。
エズラ記(ギリシャ語)ユダ王国の王ヨシヤ過越からエズラの活動に至るまでの歴史。
エズラ記(ラテン語): 「苦しみを味わい、しかもこの苦しみが何なのかわからずにいるよりは、むしろ生まれなかった方がよかったのです。」(エズ・ラ 4:12)などの根源的な問いに対して天使や神が答え、七つの幻をエズラに見せるというのが主な内容。天使は「被造物は創造主の先回りをすることはできない。」(エズ・ラ 5:44)と答える。
マナセの祈りバアル崇拝、アシタロテ崇拝を再興したユダの第14代の王マナセが、バビロンに連行されたがへりくだって神に祈り、帰国を許された。

「大天使ラファエルとトビアス」
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
(アカデミア美術館 ヴェネツィア)

「ユディトI」
グスタフ・クリムト
(ベルヴェデーレ宮殿オーストリア絵画館)

「ユダ・マカバイの勝利」
ギュスターブ・ドレ

「旧約聖書続編」から(引用)

  • お前の財産のうちから施しをしなさい。 〜 施しをすれば、人は死から救われ、暗黒の世界に行かずに済むのである。(トビ 4:7-10)
  • 〜 おごり高ぶれば、破滅を招き、秩序は大いに乱れる。無為に時を過ごせば、財産を失い、ひどい欠乏に陥るから。怠けることは飢えにつながるのだ。(トビ 4:13)
  • 慈善の業をすることがどんな利益を生み、不正を行うことがどんな害をもたらすか。不正を行うことは死にほかならないのである。(トビ 24:11)
  • ただ、主を畏れるその人こそ、常に偉大である。(ユディ 16:16)
  • 国内で自分だけが無事でいようなどと考えてはならない。(エス・ギ 4:12)
  • 「敵どもは武器と大胆さに、我々は全能の神の力に依り頼む。」(二マカ 8:18)
  • 知恵を持つ人が多ければ、世は救われ、思慮深い王がいれば、民は繁栄する。(知 6:24)
  • 光の後には夜が来る。しかし、知恵が悪に打ち負かされることはない。(知 7:30)
  • 父を見捨てる者は、神を冒涜する者。同じく 母を怒らせる者は、主に呪われている者。(シラ 3:16)
  • 必要な時に発言するのをためらうな。[お前の知恵を、見栄のために隠してはならない。](シラ 4:23)
  • できる限り隣人を見極め、知恵ある人と相談せよ。聡明な人と語り合い、専ら、いと高き方の律法を話題とせよ。(シラ 9:14)
  • 覇権は、民族から民族へと移り行く。その原因は、不正と傲慢と富である。(シラ 10:8)
  • 富は、罪にけがれていなければ、善である。貧乏が悪であるとは、不信仰な人の言うことである。(シラ 13:24)
  • 彼(権力者)と対等に話ができるなどと、思いあがるな。(シラ 13:11)
  • 主を畏れることはすべてにまさる。(シラ 25:11)
  • 傷は包帯で手当てでき、侮辱には仲直りの道がある。しかし、秘密を漏らせばもう望みはない。(シラ 27:21)
  • 多くの人が、貸すことを断るのは、悪意ではない。むざむざ奪い取られることが分かっているからだ。けれども、貧しい人には寛容であれ。(シラ 29:7-8)
  • お前の子供をしつけ、子供のために苦労せよ。さもないとその子は非行に走り、お前を困らせる。(シラ 30:13)
  • 清廉潔白な金持ちは幸いである。(シラ 31:8)
  • 実務に煩わされない人は、知恵ある者となる。(シラ 38:24)
  • 死の宣告を恐れるな。先に死んだ人と、後から来る人のことを考えよ。〜 お前が十年、百年、または千年生きたとしても、陰府では、寿命の長さは問題とされない。(シラ 41:3-4)
  • 神々の神である主を礼拝するすべての人よ、主を賛美し、感謝せよ。その慈しみは代々に変わることはない。(アザ 67)
  • むなしい者にはむなしいものが与えられ、豊かな人々には豊かなものが与えられるのである。(エズ・ラ 7:25)
  • 手に入れにくいものを持っている人は、いくらでも手に入るものを持っている人よりも大きな喜びを味わうものである。(エズ・ラ 7:50)
  • 人は皆おのおの自分の不正な行い、あるいは正しい行いの責任を負うのである。(エズ・ラ 7:105)
  • 命を選びなさい。そうすれば生きる(エズ・ラ 7:129)
  • 確かに主は、あなたたちの計画とあなたたちが心に思うことをすべて、ご存知である。罪を犯し罪を隠そうとする者は不幸である。(エズ・ラ 16:63-64)

「新約聖書」は下記で構成されています。

マタイによる福音書:使徒となったマタイの著とされる。イエス・キリストの系図、誕生の次第、幼年時代、公生涯の準備、ガリラヤ及びその周辺での公の活動、ガリラヤにおける私的な活動、ユダヤにおける活動、イエスの死と復活。最後の晩餐のモチーフである。
マルコによる福音書:著者はマルコとされる。異邦人の改宗者に向けて、キリストの教え導く業、死、復活、救い主の力強い御業を語る内容。贖罪をメシヤとしての使命の中核として強調している。
ルカによる福音書:著者はパウロの弟子の医師であるルカとされる。イエスの生涯と教えを詳述し、キリスト教の真理性を史実に基づいて証明しようとした内容。
ヨハネによる福音書:著者は使徒ヨハネであるとされてきた。洗礼者ヨハネの洗礼に始まるイエスの公生活、弟子たちに個人的に語った言葉とイエスの処刑にいたる経緯、イエスの復活までの内容。
使徒言行録:使徒ペトロパウロの活躍を中心に描いたキリスト教の最初期の様子。キリスト教が異邦人へと広がっていた様子が記録されている。構成は、キリスト教宣教の準備、エルサレムにおける宣教、ユダヤとサマリアにおける宣教、異邦人宣教の開始、パウロの世界宣教となっている。
ローマの信徒への手紙使徒パウロの手によるとされる書簡。イエス・キリストへの信仰を通して得られる救いである。神の恩寵、人が義と決定させられるのは、信者の側の信仰と結び付いた、神の側のこの恩寵のみによるとする。ユダヤ人にも異邦人にも、誇ったり自分を他の人よりも高めたりする理由は何もないとする。
コリントの信徒への手紙1:使徒パウロと協力者ソステネからコリントスの教会の共同体へと宛てられた手紙。共同体の分裂に対して「信仰によって一致してほしい」と望む内容。アガペーについて語る「愛の賛歌」を含む。
コリントの信徒への手紙2使徒パウロと協力者テモテからコリントの教会の共同体へと宛てられた手紙。内容は、パウロの内面的困難、コリントの信徒たちへの思い、慈善活動のすすめ、特にエルサレムの共同体支援の願い、パウロに対する批判への反論、コリントの信徒への配慮、結びのあいさつとなっている。
ガラテヤの信徒への手紙使徒パウロの手によるとされる書簡。律法とキリスト教徒の関係についての内容。律法の遵守なしに人間は義化されえないという立場に対する反論を含む。
エフェソの信徒への手紙使徒パウロの著とされる。エフェソのキリスト者共同体にあてて書いた手紙。福音がもたらす恵み、キリストによって異邦人にもたらされた救い、日々の生活におけるすすめなどについて書かれている。
フィリピの信徒への手紙使徒パウロフィリピのキリスト者共同体にあてた書簡。ローマで獄中にあったパウロは自らの苦難のなかで神を賛美し、また同じく周囲の無理解と迫害、さらに教義上の対立にさらされるフィリピの共同体を慮り、彼らを励まし、キリストの再臨を待ち望むことを勧める内容。
コロサイの信徒への手紙使徒パウロコロサイの共同体へあてて書いたものであるとされる。シンクレティズムの問題に対するキリスト論、あやまちを指摘し、愛の実践に励むよう願う内容。
テサロニケの信徒への手紙1:使徒パウロの書簡でコリントスで執筆されたとされるテッサロニキの信徒に宛てた手紙。信徒らが信仰に生き、愛深い生活を送っていることを感謝し、彼らの疑問に答える内容。
テサロニケの信徒への手紙2:使徒パウロの書簡とされる。キリスト来臨と裁き、不法の者についての警告、救いに選ばれた者の生き方、祈りと勧め、怠惰な生活を戒める内容となっている。
テモテへの手紙1使徒パウロテモテに宛てた教会書簡。教会での儀式や組織、司教、助祭に関するすすめが中心。正しい信仰を保つことへの励ましと偽教師への警告を含む。
テモテへの手紙2使徒パウロテモテに宛てた教会書簡。テモテマルコとともに自分を助けに来てくれるよう求めている。熱意と不動の信仰によって誤った教えに立ち向かうよう求めている。過去に受けた教えに立ち戻ること、迫害の下での忍耐、信仰上のつとめを果たすこと、裁きのときに備えることなどが述べられている。
テトスへの手紙パウロから弟子のテトスに宛てた手紙。内容はクレタにおいて長老と監督者を立ててもらうための依頼とその基準の教示、異教・異端に対する警告。
フィレモンへの手紙使徒パウロの著とされる。協力者フィレモンに宛てて、フィレモンの元を離れた奴隷オネシモがフィレモンの元に戻れるよう「キリスト者としての愛」に訴え配慮を願う内容。
ヘブライ人への手紙:差出人不明の勧告の書。キリストの御業、キリストに生きることを呼びかける内容。キリストが預言者、天使、モーセにまさることを示し、新しい契約が古い契約にとって変わったことを強調する。
ヤコブの手紙義人ヤコブの著とされる。各地に離散するユダヤ人にあてて書かれている。信仰の重要性について再確認してもらうための内容。形式主義、誘惑を神に帰すること、貧富の差で人を分けること、言葉で過ちを犯すこと、自慢や偽証、悪口、高慢、贅沢などを戒める内容。試練における忍耐、よきわざにおける忍耐、その日まで忍耐することが求められている。
ペトロの手紙1使徒ペトロの著とされる。内容は「各地に離散している人々へ」迫害に耐えること、聖なる生活を送ること、キリストにならって忍耐と聖性を示すこと、指導者たちへの助言となっている。
ペトロの手紙2:伝承上は使徒ペトロに帰せられている手紙。偽教師の誤った教えを攻撃しつつ、キリストの再臨が必ずあることを説く。「終末の遅延」の問題を扱っている。キリストの再臨を嘲笑する人々を批判し、信仰を堅く守り、正しく生きるように勧める内容。
ヨハネの手紙1福音記者ヨハネの著とされる。キリストについて、贖罪、聖性、おきてに従うこと、清め、信仰、愛における意義を示す内容。
ヨハネの手紙2福音記者ヨハネの著とされる。内容は、信仰への称賛し、愛の大切さ、偽教師への警戒、異端への対応など。
ヨハネの手紙3福音記者ヨハネの著とされる。ガイオという人物に宛てた書簡。ガイオの活動への賞賛、教会を牛耳るディオトレフェスなる人物には従わず、引き続き善を行うよう激励する内容。
ユダの手紙:著者は主の兄弟ユダと考えられている。内容は、挨拶、偽教師についての警告、信仰者への警告と励まし、賛美の祈りとなっている。
ヨハネの黙示録:迫害に苦しむ信徒を励ますことを目的とし、ヨハネが終末に起こる出来事の幻として見たことを示す内容。ヘンデルの「メサイア第2部 ハレルヤ」のモチーフ。

「最後の晩餐」
レオナルド・ダ・ヴィンチ
(サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院)

イエス・キリスト
(アヤ・ソフィア)

「ピエタ」
ミケランジェロ・ブオナローティ
(サン・ピエトロ大聖堂)

「聖ペトロのイコン」
聖カタリナ修道院(正教会)所蔵

大天使ミハイル(ミカエル)のイコン
モスクワ・トレチャコフ美術館蔵

『ヘントの祭壇画』に描かれたガブリエル
ヤン・ファン・エイク

大淫婦バビロン
(1800年代の作品。ロシアのエングレービング)

ダンテの『神曲』地獄篇の悪魔大王の挿絵
ポール・ギュスターヴ・ドレ

「パトモス島の福音書記者ヨハネ」
(ベリー公のいとも豪華なる時祷書)

「新約聖書」から(引用)

  • 求めなさい。そうすれば、与えられる。(マタ 7:7)
  • もし完全になりたいのなら、行って持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。(マタ 19:21)
  • だれでも高ぶる者は低くされ、へりくだる者は高められる。(マタ 23:12)
  • あなたがたの中でいちばん偉い人は、いちばん若い者のようになり、上に立つ人は、仕える者のようになりなさい。(ルカ 22:26)
  • 悪魔が偽りを言うときは、その本性から言っている。(ヨハ 8:44)
  • 正しい者は信仰によって生きる(ロマ 1:17)
  • わたしたちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。希望はわたしたちを欺くことがありません。(ロマ 5:3-5)
  • 隣人を自分のように愛しなさい。(ロマ 13:9)
  • 愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。愛は自慢せず、高ぶらない。礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。不義を喜ばず、真実を喜ぶ。すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。(一コリ 13:4-7)
  • 信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である。(一コリ 13:13)
  • 目を覚ましていなさい。信仰に基づいてしっかり立ちなさい。雄々しく強く生きなさい。何事も愛をもって行いなさい。(一コリ 16:13-14)
  • 霊の結ぶ実は愛であり、喜び、平和、寛容、親切、善意、誠実、柔和、節制です。(ガラ 5:22-23)
  • わたしたちの本国は天にあります。(フィリ 3:20)
  • 何をするにも、人に対してではなく、主に対してするように、心から行いなさい。(コロ 3:23)
  • 「〜 主から懲らしめられても、力を落としてはいけない。なぜなら、主は愛する者を鍛え、子として受け入れる者を皆、鞭打たれるからである。」あなたがたは、これを鍛錬として忍耐しなさい。〜 後になるとそれで鍛え上げられた人々に、義という平和に満ちた実を結ばせるのです。(ヘブ 12:5-11)
  • 人はそれぞれ、自分自身の欲望に引かれ、唆されて、誘惑に陥るのです。そして、欲望は孕んで罪を生み、罪が熟して死を生みます。(ヤコ 1:14-15) 
  • 大天使ミカエルは、〜 悪魔と言い争ったとき、あえてののしって相手を裁こうとはせず、「主がお前を懲らしめてくださるように」と言いました。(ユダ 1:8)
  • 全能者がこう言われる。「わたしはアルファであり、オメガである。」(黙 1:8)
  • 悪魔は、火と硫黄の池に投げ込まれた。そこにはあの獣と偽預言者がいる。そして、この者どもは昼も夜も世々限りなく責めさいなまれる。(黙 20:10)
  • 主イエスの恵みが、すべての者と共にあるように。(黙 22:21)

結びに…

「聖書」は膨大な情報量の書物ですが、先人が紡いできた歴史であると同時に、与えられた命を懸命に生きることが生きる者の使命であり責任であるという先人からのメッセージが込められています。

現代においても、中東ではイスラム教を信仰するイスラエル人と、イスラム教を信仰するパレスチナ人が、ガザ地区において武力衝突しています。また、ロシアとウクライナの武力衝突の原因の一つに、ウクライナのロシア正教会からの独立という宗教上の契機があります。このように、世界各地で宗教に関連した国家間での争いが絶えません。

しかし、聖書を読むとなぜこのような宗教間の対立が生じるのかが分かってきます。例えば、旧約聖書の創世記にアブラハムの息子であるイシュマエルとイサクという異母兄弟が登場します。アブラハムはユダヤ教においてはユダヤ人の、またイスラム教においてはアラブ人の系譜上の祖とされる預言者です。エジプト人のハガルを母に持つイシュマエルの子孫は後にアラブ人となり、ヘブライ人のサラを母に持つイサクの子孫は後にユダヤ人として発展していきます。つまり、アラブ人が重要視するイシュマエルとイスラエル人が重要視するイサクは異母兄弟なのです。またイエス・キリストや聖母マリアはユダヤ人の出身であり、キリスト教は言うまでもなくユダヤ教と同じ神を信仰していることになります。これは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のいずれもがその源流を辿れば同じ神を信仰していることを意味しています。

その後の歴史や、解釈の違いが軋轢を生み争いに発展していくことになりますが、複雑かつ多様化した価値観を理解することなく、問題を解決することは難しいように思います。知識社会に生きる私たちは、その格差や価値観の多様性を理解するためにも「無知」という罪を犯さないよう努める義務があるのではないでしょうか。

さて、聖書において商人は原則として悪に陥りやすいことが指摘されています。しかし同時に、善としてのビジネスとはどうあるべきか、聖書にはそのヒントも多く示唆されています。その意味で聖書は、ビジネスパーソンの皆様がビジネスの本質を理解し、ビジネスを通して社会に貢献するための手引書とも言えるかもしれません。

今回紹介した旧約聖書、旧約聖書続編、新約聖書は下記に全て収録されています。ビジネスの本質を理解するために「聖書」を是非お手に取っていただくことをお勧めします。