今回は「世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ」齋藤ジン 著・文藝春秋 刊を題材に、次世代の経営戦略について考えていきます。ポスト新自由主義の世界秩序の理解につながる要点と経営者やビジネスパーソンがすぐに仕事で実践できる取り組みについて整理しました。
まず、新自由主義と呼ばれるこれまでの社会は下記を前提として成り立ってきました。
- 政府介入は小さい方がよい
- 市場は最適化する
- 個人の自己責任
しかし、新自由主義により格差が広がり過ぎたため世界は次世代の社会あり方を模索しています。著者の齋藤ジン氏は、今後の米国は政府が介入し「広い庭に高い壁」の政策が取られ、その結果として次のような社会が到来すると見込んでいます。
- 米中対立が激化し冷戦となる(米国の中国への抑止力が強化される)
- サプライチェーンは非常時への備え重視の体制「ジャスト・イン・ケース(JIC)」へ
- 日本は自国回帰・政治主導の再設計で追い風となる
- 次のアジアの成長エンジンはインド
そのような状況に合わせ、日本が国家として取り組まなければならないことは下記と指摘しています。
- 効率的な政治介入体制の構築
- 1,000兆円の家計の金融資産の運用体制の構築
- 政財官の連携強化
- 安全保障の強化
その上で日本の企業がしなければならないことを次のように指摘しています。
- コア集中×IT化×ホワイト化で生産性向上(財務健全化・品質向上・長時間労働脱却・人材と価値観の多様化・価格転嫁・契約条件見直し等)
- ジャスト・イン・ケース(JIC)型サプライチェーンの再構築(代替調達先・在庫の最適化・国内回帰の採算モデル構築 等)
- 収益力を強化しゾンビ企業淘汰の時代に備える
- 資産運用と雇用流動化でインフレ時代に備える
- 希望(べき論)を排し現実のシナリオを実務に反映する
- 多様な意見を市場に取り込む
本書は、新自由主義の終わりを嘆く本ではありません。著者の視点は、日本はIT投資による業務自動化・データ連携・AI活用などにより、まだまだ伸び代があると指摘しています。2025年1月20日のドナルド・トランプ米国大統領の第2期就任に象徴されるように、世界のゲームのルールが変わったことを冷静に受け止め、その上ですべてのビジネスパーソンは「希望は戦略ではない」ことを理解し実務の再設計に取り組む必要があります。政治主導による国内資金の活用を武器に、企業はコア事業への集中、JIC供給網の構築、ホワイト化、IT化などにより、日本の「順風」を成果に変えていかなければなりません。
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(当記事執筆者:辻中 玲)