「HPウェイ」からデジタル化と経営の原則を学ぶ

デービッド・パッカードが著した「HPウェイ: 偉大なる経営者が遺した経営理念と行動規範」は、経営書の定番として多くのビジネスパーソンに読まれる名著です。

コンピューターと電子計測機器の製造を行うヒューレット・パッカード社は、ビル・ヒューレットとデービッド・パッカードによって1939年に創業されました。発祥の地であるカリフォルニア州パロアルトにあるガレージは、シリコンバレー発祥の地となっています。

その中で核心となる経営論「HPウェイ」は下記の7項目から成り立っており、業種や規模に関わらず、あらゆる企業が理解しておくべき普遍的な原則となっています。

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利益
利益は社会に貢献するための最善の手段であり、企業の力を示す究極の情報源である。他の目標と矛盾することなく、最大限の利益の達成に努めるべきである。

顧客
顧客に提供する商品の品質、利便性、価値を、つねに改善する努力をする。

関心分野
新たな成長の機会をつねに探りながら、わが社に対処能力があり、貢献が可能な分野のみに関与する。

成長
企業の力の現れとして、また存続の必要条件として、成長を重視する。

従業員
みずから貢献した成功に対して分配を受ける機会など、雇用にともなう機会を従業員に与える。実績にもとづいて雇用を保障し、仕事の達成感から個人的な満足を得る機会を提供する。

組織
一人ひとりのやる気、自発性、独創性を育てる組織環境を維持し、定められた目標や目的に向かうときの自由裁量を広く認める。

市民としての行動
会社を取り巻く地域社会や、そのなかのさまざまな組織に貢献し、よき市民としての義務を果たす。

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また、本書には下記のように、HPにおける様々な実務上の目安となる基準も提示されています。こちらは企業によって適応の可否や調整が必要な部分かと思いますが、強固な事業基盤を構築した基準として、経営において非常に参考になるかと思います。

  • 年間の研究開発費は売上高の8〜10%
  • 従業員への利益の分配率は基本給の4.1%〜9.9%
  • 新規事業はライフサイクルを通してもたらされる利益が開発にかかったコストの6倍以上になるものを採用する
  • 1〜2年の景気後退への対処は労働時間を10%短縮して賃金を10%減らす
  • 利益を再投資し長期借入金には頼らない
  • 重要ポストにつく人物は社内から選ぶ
  • 新製品を通して事業を展開する

HPから1977年に発売された「HP-01」は、スマートウォッチの原型とも言われています。1977年にウェアラブルデバイスを生み出したシリコンバレーの文化の原点に触れることができます。その文化の流れを汲むGAFAMが現代の世界を席巻していることは決して偶然ではありません。

本書は、テクノロジーに関わる方だけでなく、デジタル化への理解を必要とするあらゆるビジネスパーソンの皆さまに、ご一読をおすすめいたします。

(当記事執筆者:辻中 玲

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